ここ最近、お仕事で「レーヨン」や「テンセル」についての話題があったので、私はこの二つの繊維について気になっていました。
近年、レーヨンが服の素材に使用されていることが、本当に多くなってきました。お店で服の素材を見ると、頻繁にレーヨンを目にします。(筆者の体感です。)
服作りにおいて素材の知識は重要です。今日はレーヨンとテンセルについて、服作りをする上で知っておいて良かったという内容だけ(私の独断と偏見によって)ピックアップしました。服を作るときの参考にしていただけると嬉しいです。
レーヨンとテンセルは親戚?

どちらも木材を原料とした繊維です(テンセルはユーカリの木が多いようです)。ふたつはつまり親戚、いや、兄弟ともいえるほど近い存在なのです。
この二つの素材、共通しているのは、
- 柔らかさ
- 吸湿性の高さ
- 肌ざわりの良さ
です。一方で
- 強度
- 環境負荷
については違いがあり、レーヨンはテンセルに比べどちらも劣っています。
毛玉(pilling)の違い
レーヨンとテンセル、違いに「強度」を挙げました。この強度というもの、毛玉と深く関係があります。
詳しいメカニズムまでは書きませんが、
- 繊維の強度が低い→繊維が切れやすい→切れた繊維同士が絡まり毛玉ができやすい
- 繊維の強度が高い→繊維が切れにくい→毛玉ができにくい
という関係があります。レーヨンの服を身に着けたとき、気づけば毛玉だらけになっていたことはありませんか?
実はレーヨンは、強度がとても低い繊維なんです。とくに水分を含むとそれが顕著になります。
一方テンセルは、レーヨンに比べて強度が高い繊維です。これはレーヨンと異なる糸の製造方法により「構造自体が丈夫」にできているためです。
つまり、テンセルはレーヨンに比べて毛玉ができにくく、レーヨンは毛玉ができやすい、という特徴があることがわかります。毛玉にも違いがあったなんて。似て非なるもの、それがレーヨンとテンセルです。
<番外編>「テンセル」と「リヨセル」は何が違うの?
こちらも間違いやすいですが、“実はどちらも同じもの”です。
テンセル:レンチング社の登録商標(ブランド)
リヨセル:一般名(指定外繊維としての素材名)
しかし、日常では「テンセル」の方が多く使われています。絆創膏をカットバンと呼んでいるのと一緒かもしれません。
テンセルより、レーヨンの方がよく見かけるのはなぜ?

@photoAC
先ほどあげた特徴をみてみると、レーヨンよりもテンセルの方が品質的にはいいもののように見えます。ですが、買い物にいくと「テンセル」よりも「レーヨン」のほうをよく見かけませんか?
どちらも木材から出来ているのに、なぜ?そもそも、同じような素材が2種類存在するのはなぜ?私が思っていた疑問は、あるふたつが関係していました。
それは、「製造プロセス」と「コスト」です。
木材の塊を薬品で溶かして、とろとろになったものを糸にしよう!これが再生繊維のイメージです。レーヨンとテンセルは、使う薬品が違います。薬品が違えば工程も変わりますね。
さらに言えば、レーヨンの方が化学薬品を多く使用(硫酸などの強い薬品など)するため、環境負荷は大きくなります。
レーヨンの方が薬品多く使うし環境にやさしいのはテンセルなのに、なんでいまだにレーヨンが多いの!?
そんな矛盾を感じるのはあなただけではありません。私もそう思っていました。ここで「コスト」という問題が降りかかってくるのです。
レーヨン120年以上の歴史が、コストでものを言う

photo@パブリックドメイン
レーヨンはテンセルに比べて、圧倒的な歴史をもっています。
この長い年月をかけて、レーヨンは製造技術を確立し、広く普及させてきました。よって、低コストで大量生産が可能になりました。
これがどういうことを言っているのか、少しわかりにくいかもしれません。
たとえば、発展途上国ではQRコード決済が一気に普及しましたが、 日本では現金決済という“既にできあがった仕組み”が強く、 新しい仕組みが浸透するまで時間がかかりました。
レーヨンも同じです。長い歴史の中で作られた“既存の巨大な生産体制”があるため、 環境にやさしいテンセルが登場しても、すぐに置き換わるわけではない、ということなのです。
どちらを選ぶかは自由
どっちが悪でどっちが良い、ということは一概には言えません。両方の特徴をよく知ったうえで、素材を選ぶというのが大切なのかもしれません。
これらの特徴を知るまで、あまり深く考えることなく生地を選んでいる人も多かったのではないでしょうか。私も含めて、これからはよく考えて生地を選んでいきたいですね。
レーヨン登場の記事は他にも→アセテート服はどう扱う?「アイロン」の熱で溶けやすく、「除光液」では穴が開く
毛玉についての記事は他にも→この「毛玉」、何とかしたい。「毛玉」を知る人の上手な“扱い方”
2024/5/15、2026.5.24追記編集 ASUKATA
<参考資料>
・テキスタイル事典 閏間 正雄監修
・わかりやすいアパレル素材の知識 ファッション教育社



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