アセテート服はどう扱う?「除光液」と「アイロン」に気をつけろ

除光液@photoAC
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素材のことって、特徴は~で、デメリットは~で、と退屈で結局よくわからないし、もう全部一緒に見える!綿、麻、ポリエステルの3種類くらいで生活したいものですが、技術進歩が激しい時代、そういうわけにもいきません。

わかりにくい、横文字の素材…。スルーしたいところですが、スルーするとろくなことになりません。知ることで失敗は回避できます。

今回は近年よくみるようになってきた“アセテート”について。構造を理解すると親近感がわいてきます。

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アセテート服は「除光液」で“穴が開く”

アパレル業界では一般的に知られている内容だそうですが、正直私は全く知りませんでした!(自分に引く)

アセテート素材の服といえば、細かなプリーツ処理が施されたスカートや、服の裏地などによく使用されます。滑りがよく、ふわっと軽い素材です。

そんな素敵なアセテート服を着て、ネイルサロンに行ったあなた…。ちょっとでも除光液に当たってしまったなら…瞬く間に穴が開くので注意しましょう。

除光液は、アセテートにとって「自分を液体に戻してしまう物質」

アセテート繊維はもともと、木材パルプ(セルロース)にお酢の成分(酢酸)を加え、そしてアセトンでドロドロに溶かし、その後アセトンを気化させることで糸を作っています。

え、まって?アセトンって、除光液に入ってるアレ…?

そうなんです。アセトンは、アセテートを繊維にする際に使われる成分のひとつだったのです。

除光液のアセトンとアセテートが出会うということは、また液体に戻ってしまうということを意味します。

つまり「穴が開く」というのは、アセトンでドロドロに溶かされたために穴が開いたようになった、ということです。なるほどだから穴があくわけか、とご納得いただけたかと思います。

【深堀り】アセテート①(苦手な人は飛ばしてね)

実はアセテートは、レーヨンと親戚。というのも、ふたつとも同じセルロースを原料としているからです。

レーヨン構造
レーヨン:(水が大好きな)-OHをたくさん持っているのが見てわかる

レーヨンは「水が大好きなOH基」をたくさんもっていますが、これがレーヨンの弱点とも言えます。

水はそこら中にある物質ですから、いやでもレーヨンは水を抱え込んでしまうのです。そして水をなかなか離しませんから、水の重みで素材は自重で伸びたり、ウォータースポットとよばれるシミのようにみえるものができることもあります。

ですが、レーヨンという魅力的なものを何とか使いたい。水と仲良しのOH基を何とかすればいいのでは?!

そこでアセトキシ基(CH3COO-)というものに置き換えてやろう!と出来上がった繊維がアセテートというわけです。

アセテートがアセトンと出会うと、じつは化学反応がおきるわけではありません。アセトンは構造の中に入り込んでしまい、アセテート繊維の構造が維持できなくなりドロドロになってしまう、というイメージです。

アセテートは「熱」に弱い

アイロン
@photo AC

とにもかくにもアセテート服は、アイロン注意の素材です。

Information

・タグの取扱表示を必ずチェックする(設定温度をチェック!)

・あて布をする(薄手のハンカチなどでOK!)

ここまで熱に慎重になるのには、アセテートの構造上に理由があります。

【深堀り】アセテート②(苦手な人は飛ばしてね)

アセテートとレーヨンは親戚同士でしたね。基本的な構造は似ていますが、二つは手に持っている種類が違います。

  • レーヨンは水大好きヒドロキシ基(OH)
  • アセテートはアセトン仲良しアセトキシ基(CH3COO-)

このふたつを見比べてみてください。

持っているものが、アセテートはなんだかごちゃっとしていませんか?このごちゃつき、そのまま構造のイメージにしてください。

アセテートの構造は、このアセトキシ基(CH3COO-)が大きくかさばってしまうんです。じつはこのかさばりがあることで、アセテート分子の結合を弱めてしまっています。

分子間の結合が弱まることが何を意味するのかというと、

  • メリット:構造がゆるくなることで、風合いが柔らかくなる
  • デメリット:構造がゆるいので、熱というちょっとした振動で分子がすぐに動き出す→変形する

熱に弱い理由は、この構造がゆるいことが原因だったのです。(でも、おかげで柔らかくふわっとした風合いが魅力的な素材へと変貌)

ちなみに、もともとアセテートは繊維を作るときにアセトンを気化させるといいました。除光液って、匂いがすごいですよね。そう、とても気化しやすいんです。

なので、アセトンがシュッ!と液体から出ていくその時に、キュッ!とアセテート自身は縮みます。この縮みが、アセテート特有の断面(不規則なひだ状)となり、光の乱反射で光沢が生まれるというわけです。

ただし、これもアイロンの熱で押さえつけてしまうとこのひだはいとも簡単にぺちゃんこにされてしまいます(二度と戻らない「テカリ」となる)。→あて布は、物理的にぺちゃんこにしないようにするために必要なのです。

ちょっとマニアックなお話が続きました。

アセテートは、熱を加えて変形してしまったが最後、一度形が変わったものは、なかなか元には戻ってくれません。それは、そもそも構造がゆるゆるなので、一度ズレたらもとに戻りようがないからなのです。(分子レベルでズレているため)

細くてきれいなプリーツが施されたアセテートのスカートは、絶対に高温でアイロンをしないようにしましょう…。

正しい知識で、アセテート素材と付き合おう

これらを踏まえて、アセテート素材はこういった特徴があることを念頭に置いて購入しましょう。特徴がわかれば、ビクビクする必要はありません。

わたしも繊維を勉強し(分子レベルの話で)理解するまで、アセテートがこんなにもデリケートな素材だとは知りませんでした。

どんな素材も、メリットであることが裏返せばデメリットになる。この二つは共存しあう関係です。素材とうまく付き合って、賢く服と付き合っていきましょう。

2026.5.17 ASUKA


ASUKATAでは、「なんで?」「どうして?」を大切に、独学から出発したいろいろな考え方をブログで紹介しています。答えはひとつじゃない、いろいろな方向から考えてみましょう!ではまた。

-参考URL-・繊維の歴史(J-stage)・化学繊維の種類 日本化学繊維協会

-参考文献-・繊維製品の基礎知識 日本衣料管理協会

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