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アパレル業界の求人でよく見かける「検品」という言葉。
「ふむ、寸法を測るだけの簡単なお仕事かな?」と軽く考えているなら、そっとあなたの肩を叩いて言いたい。
「・・・そんなもんじゃない。・・・」
検品とは、寸法を測るだけではない。
いや、むしろ寸法なんて氷山の一角だ。
検品枚数が300枚を超え、私はようやくその奥深さに気づき始めた。いや、気づいてしまった。
検品は奥が深い・・・!
ベテランの元で修行の日々
私は今年に入ってあたりから、検品を頼まれるようになった。
今では多いときは日に10枚見ることもある。そもそもどの程度が普通なのかわからないが、他の業務もこなしながら、全集中で検品をこの枚数こなすのは、私にはかなりキツイ作業だ。今でも体調がすぐれないときは、結構キツイ。
検品を始めた当初、私は幸運にもベテラン女性の元で修行させてもらった。
当初の私は寸法を測って縫製が仕様通りか確認。トルソーに着せてうんうん、と何となく服を眺め(何を見ていたのか今ではなぞだ…)、特に問題なさそうなのでそのままベテランに報告しに行く。
だがしばらくの間、検品作業はなかなか終わらなかった。慣れないことで時間もかかっていたが、それ以前に、検品するという能力が足りていなかった。
あるときは「鼻検品」

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検品は五感すべてを使う。視覚、触覚、嗅覚、そして”なんか違和感”と感じる第六感だ。
ある日、私はベテランの元へ向かった。
寸法もOK、縫製もOK。あとは検品内容を報告するだけだ。
私「お願いします。」商品をもってベテランの元へ行く私。ベテランは、は~い!と返事をした瞬間のことだ。
ベテラン「くっさ~~~~!ナニコレ!!」
服を持つなり、ベテランの第一声が飛んだ。
私「・・・・?!?!・・・」
ベテラン「これ、すごく臭いねぇ?生地が匂うよ、ダメだこれ。」
私「・・・(匂い!?)・・・(ん?そういえば…)」
私はベテランに言われるまで、そのにおいに気づかなかったのだ。
寸法や縫製ばかりに気を取られ、匂いにまで私の脳は気づかなかったようだ。
きっと消費者だったら、手に持つとすぐに気づくだろう。
消費者目線でモノを見るのは、本当に大変だ。
生地によっては独特の匂いがある場合がある。製造過程で使われる薬品や、保管環境、その他いろんな原因で匂いが衣服につくことはしばしば起こりえる。とくに海外で製造した場合は匂いがつきやすいので注意しなければならないのだ。
検品には「鼻検品」なるものがあることを知った日だ。
検品はパターンの知識も必要
またあるとき、ベテランと一緒にトルソーにアイテムを着せて検品していたときのことだ。
ベテラン「なんかへんだね、これ」
私「・・・(え?)・・・(どこ?)・・・・」
ベテラン「これパターンだわぁ・・・」
私「・・・(ほう)・・・・」
パターン。つまり型紙の設計ミスだ。
寸法は合っているのに、着せると不自然。肩が浮く、袖がねじれる、裾が曲がる。あげればきりがない。
これは寸法表では見抜けない。着せてみて、動かしてみて、ようやく見えてくる。
そしてベテランは同時に、「これ、量産したらクレーム来るよね?」という生産者の視点も持っている。
この二刀流、なかなか真似できるものではない。
統一性に呪われる

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量産とは、同じものを大量に作ることである。
しかし、同じ生地でも反(ロール)が違えば、色味が微妙に変わる。
ブラックといっても、青みがかったブラック、赤みがかったブラック、墨汁みたいなブラックがある。
それを気にせず量産すれば、同じ商品なのに色がバラバラ。統一性が崩壊する。
産業は違えど、これはすべてのメーカーに共通するだろう。
例えば農業を考えてみよう。
今のスーパーでは、規格通りの野菜しか店頭に並んでいない。少し曲がっていたり、太すぎたりすると「規格外」として扱われているのが現状だ。
アパレルも同じ。少しでも違えば、それは「不良品」になる。
検品とは、この「規格」という名の呪いと戦う作業でもある。
少しでも規格と違えば、すぐに弾き飛ばされてしまうのだ。規格は必要なものだが、行き過ぎた現代の「規格外れ」には、私は考える余地があるように思う。
「検品」侮ることなかれ
検品は単純な作業と思われがちだ。
「寸法測って、縫製見て、タグ確認して終わりでしょ?」と。違う。断じて違う。
シンプルな作業こそ、奥が深い。
見落としやすい。油断しやすい。慣れが敵になる。
300枚を超えた今、ようやくそのことがわかってきた。
「君、ちょっと肩が浮いてるよね」「君、匂いが強いね」「君、パターンがズレてるね」
そんないろんな「?」なところを深堀りしながら、今日も私は検品をするのだ。
ASUKATAでは、「なんで?」「どうして?」を大切に、独学から出発したいろいろな考え方をブログで紹介しています。答えはひとつじゃない、いろいろな方向から考えてみましょう!ではまた。
2025/10/11 執筆 岩山